9条改憲賛成という人にこそ知ってほしい、もはや憲法とは言えない自民改憲案の中身。たった一人の判断ですべてをチャラにできる緊急事態条項。【2016参議院選】

創価学会パンフ

前回記事で、「安倍自民が狙う『身の毛もよだつ怖い怖いこの国の未来像』について書く」と予告しましたので、その話を書きます。忙しい人は太字のところだけでも読んでね。

『9条改憲賛成という人にこそ知ってほしい、明治憲法より酷い正気の人が書いたとは思えない自民改憲案の中身。内閣総理大臣たった一人の判断ですべてをチャラにできる緊急事態条項』

憲法9条は改正すべきだ、という意見の中身について考える。フルスペックの「普通の軍隊」を認めてもいい ?

あなたは、憲法9条改正に賛成ですか、反対ですか。もし賛成ならなぜですか。あなたが9条を変えてもいいと思っているその理由と、自民党が憲法を改正して目指そうとしていることとは、実は180度違うかもしれません。今度の選挙の投票日までのあと数日、少し考えてもらいたい、憲法9条改正に賛成という人に伝えてもらいたいことがあります。

[ 1. 今の自衛隊を認めるだけ ? いえ、フルスペックの軍隊と無制限の海外派兵を認める改憲案です。]

世論調査で「憲法9条は変えない方がいいか、変えた方がいいか」という二択の質問がよくあります。その結果、変えた方がいいという意見が3割程度はあるようです(注1)。その理由として「今の自衛隊の存在を明記すべきだから」という意見が賛成の人の1/3程度あるようです。つまり現実に自衛隊は存在する、それは認めるしかない。憲法上自衛隊は合憲なのか違憲なのか曖昧なまま来たが、もうはっきりさせた方がいいのではないか。憲法に「自衛のための軍隊を持つ」と書いた方がいい。そう考える方がイメージしているのは「現状の自衛隊(個別的自衛権と専守防衛の自衛隊)」ではないでしょうか。しかし、自民党が憲法改正で狙っているのはそうではありません。

自民党の憲法改正草案はこちら日本国憲法改正草案Q&Aはこちら。改正案の9条の条文は注3。

・戦力の不保持、交戦権の否認は完全に削除されている。第2項「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」はまるまる削除。

・新たな第2項は「前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない」。「自衛」という言葉がついていても何の歯止めにもなりません。現行憲法下でも「自衛のためなら、攻撃されていなくても(攻撃されるとこちらが判断したら)敵基地攻撃もOK」「自衛のためなら核兵器もOK」という議論すらある。しかも、この「自衛」は「集団的自衛権(=他衛)」も含む意味で使われている。Q&A によれば、「主権国家の自然権(当然持っている権利)として『自衛権』を明示的に規定したもの」であり、「『自衛権』には国連憲章が認めている個別的自衛権や集団的自衛権が含まれていることは、いうまでもありません」とされる。昨年の国会では「様々な制約を付けた集団的自衛権」ですら学者や国民から大反対されたのに、改正草案では制限なしの「集団的自衛権」を認めている。「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動(略)を行うことができる」という条文は、「価値観を共有する」と安倍自民が言うアメリカとの(国連決議抜きの)「多国籍軍」「有志連合」方式の戦争を認めるものになっている。結果として無制限の軍隊と海外派兵を認める内容となっている。

・秘密保護法を認め、さらに軍事裁判所を設置する。

・「公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動」は、国内での暴動(と政府が判断するもの)を軍隊を使って鎮圧する内容です。

・「国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない」国民に防衛の義務を負わせ、資源を巡る紛争を軍事力で解決することを合理化する条文。こういうときこそ外交努力をすべきであって武力に訴えてはならないという9条第1項「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」という規定と矛盾する内容。

こうなると9条1項の「平和主義」は完全に骨抜きとなり、他国の普通の軍隊と全く変わらないフルスペックの軍隊を持つことになります。

[ 2. 庶民の日々の生活には関係ない ? 18歳選挙権と徴兵制はセット。徴兵制が復活し、従わない者は軍法会議で死刑。]

しかも、合憲なのか違憲なのか曖昧なままの自衛隊の憲法上の位置づけをはっきりさせるだけの改憲だから、自分たちの日々の生活とは関係のない話だと思っていませんか。そんなことはありません。一番直接関係があるのは徴兵制の復活でしょう。それ以外にも、軍隊が強い力を持つ場合国民の基本的人権は制限され、軍事予算を確保するため社会福祉は削られます。フルスペックの軍隊を認めることと人権を制限することはセットになっているのです(注4)。人権を制限することのできる緊急事態条項については後半で書きます。とりあえず徴兵制のことを見てみましょう。

軍事裁判所について、石破元防衛大臣は、「命令に従わないものは死刑」と発言しています。

厳密に言えば、一般国民に対してではなく、「命令に従わない”軍人”は死刑」と言っているのですが、では、一般国民が軍人となる「徴兵制」はあり得ないのでしょうか。安倍首相は「ありえない」と言っていますが、この人が「絶対に」とか強調すればするほど怪しくなってきます。懲役は苦役になるのでそれを憲法が禁じている以上徴兵制はあり得ない、というのが安倍氏の理屈ですが、では改正草案の18条を見てみましょう。

「第十八条 何人も、その意に反すると否とにかかわらず、社会的又は経済的関係において身体を拘束されない。 」

何でわざわざ、「社会的又は経済的関係」と言う語句が入っているのでしょう。「社会的又は経済的関係」以外の理由、例えば政治的とか軍事的という理由で拘束することはあり得るという意味でしょうか。一方で現憲法にある「何人も奴隷的拘束を受けない」と言う語句が削除されています。これは何を意味するのでしょう。難しい理屈はひとまず置いておくとして、正直に本音を語っている人がいます。

自民党 西田昌司 18歳選挙権と徴兵はセット

自民党ではありませんが自民党のお仲間の本音。憲法改正派政党 日本のこころを大切にする党 西村 真悟の壮大な軍国青少年生産プラン 軍事大国のために教育改革も軍国化 (西村候補のこの動画の文字起こしはこちらのブログ) 「高校、大学、企業に入る条件に徹底的な軍事訓練を」「徴兵は最大の教育改革」「教員資格は、自衛隊で3年間の勤務経験を経た者に!いざとなれば兵士に!」このラストで徴兵制と軍事訓練は1.教育の改革と2.防災の訓練、3.いざとなれば兵士になる、国を護るために体を張る青年が育っていくと、一石三鳥だと主張しています。

自民党 船田議員(憲法改正推進本部長)発言 「理屈で言うと徴兵制の可能性はある」

一応そのあと「「もし徴兵制をやろうとした時には自民党内で大反対が起きるし、自分が自民党の憲法改正推進本部長である限りはそれは許しません」と言っているのだが、ならばなぜ単純に「許しません」と発言せず、含みを持たせるのか。そもそもその肩書きにあと何年いるつもり ?

石破氏「徴兵制は苦役ではないから憲法違反ではない」

また、制度としての徴兵制がなくても経済的理由で「志願」する「経済的徴兵」を危惧する声も多い(例えばこちら、「経済的徴兵制」で検索すればいくつものサイトがヒットする)。

ちゃぶ台返しか、最強のジョーカーか。内閣総理大臣たった一人の判断ですべてをチャラにできる緊急事態条項99条。根本にあるのは立憲主義の破壊。

[ 3. 9条改憲よりこわい「緊急事態条項」。内閣総理大臣一人の判断で何でもできる独裁政治。無制限の戦争を認める事は独裁政治とセット。]

9条の改正よりもっと怖いのは、98条、99条の「緊急事態条項」です(注5)。憲法の他の章で何を定めようとすべてをチャラにできる魔法の条文が「緊急事態条項」です。しかもそれはたった一人の判断でできます。一応閣議にはかるとか、国会の承認とかを条件にしていますが、国会の承認は事後承諾でもよく、議院内閣制ではよほど与野党伯仲でなければ、議会が内閣の提案を拒否することは考えられません。また閣議も、もし反対する閣僚がいれば、任命権者である総理大臣が相手を罷免し自分の言うことを聞く別の人物に替えることができます(事実、安倍総理は内閣法制局長他の人事を自分に有利なように「首のすげ替え」を行ってきました。そのことが安倍内閣の暴走を許しているひとつの要因となっています)。

このブログでは何度か「緊急事態条項」について書いてきました。詳細は過去記事をご覧いただけるとありがたいのですが、内閣に立法権を与え(内閣が法律と同じ効力を持つ政令を作ることができる=つまり独裁だね)、国民もまた国の指示通りにしろと命令でき、当然基本的人権は制限される。仮に(9条改正は国民の反対が大きいので)9条改正がなくても、緊急事態条項があれば9条は改正されたも同じ。

[ 4. 権利ばかり主張せず、お国のために命を投げ出す義務を果たせ。国防の義務から「国旗国歌尊重義務」「家族愛の義務」に至るまで。戦争反対の声は押しつぶされる。]

なぜこんなでたらめな、「正気の人が書いたとは思えない」、「明治憲法より酷い」、「ごく一部の人たちの願望がそこに表現されているだけ。内輪で盛り上がるための作品のような」憲法草案ができたのか。

それは自民党基本的な考え方が、戦前のような社会を目指しているからです。彼らの本音を過去記事で書きました。彼らが自分の口から本音をしゃべっている動画をいくつか紹介しましたが、詳細はそちらの過去記事を見てください。重複になりますが、その動画をひとつだけ再掲しておきます。

ぜひ、他の動画もぜひ見てください。 ・憲法を変える時が来た。もうこれ以上延ばす事はできない。 ・国民主権、基本的人権、平和主義、この三つをなくさなければホントの自主憲法とは言えない。 ・日本にとって一番大事なのは皇室であり、国体である。 ・国防軍を創設する。 ・国民の生活が大事という政治は間違っている。 ・国を護るには血を流さなければいけないんです。 ・国のために命を捧げる覚悟を。 ・国に命をかけるものだけに選挙権を。 ・国際紛争でアメリカの若者が血を流しているのに、日本の若者が血を流さなくていいのか?・・・・・・これが彼らの本音かと思うと、もう頭がくらくらしてきます。一部の跳ね上がりではない、自民党政調会長や大臣・幹事長経験者他、幹部クラスの発言がこれです。

要するに権利ばかり主張せず、お国のために命を投げ出す義務を果たせ、と言っているのです。「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない」(12条)と定め、「国を自ら守る」義務(前文)などを新設し「国防の義務」「国旗国歌尊重義務」から「家族愛の義務 ? 」に至るまで、様々な義務が国民に課せられる。公益及び公の秩序に反すると政府が判断すれば、戦争反対の声は押しつぶされる。

[ 5. 中学の公民の教科書にも載っている「立憲主義」。それを破壊する改憲案は、名前は憲法でも実態は憲法ではない。]

要するに立憲主義が理解できないんですね、自民党は。立憲主義を知らない自民党憲法起草委員会事務局長の礒崎陽輔氏がこんなtweetしています。(余談ですがこの磯崎氏集団的自衛権のでたらめな例え話を10代の女子に論破されちゃった人です。)

だけど立憲主義は中学の公民の教科書にも載っています。教科書にはこう書いてあります。

「憲法は、政府の権力を制限して国民の人権を保障するという立憲主義の思想にもとづいて、政治権力の乱用を防いで、国民の自由や権利を守ります。立憲主義の考えは、政治が人の支配によってではなく、法によって行われる事を要求する法の支配の思想とほぼ同じものです。」

私がへたくそな文章を長々と書いている間に(^ ^ ; SEALDsさんが、実に要領よくまとめてくれていました(^_^)。全文はリンク先をお読みいただくとして一部引用させていただきます。

そもそも憲法というのは、国民がはじめから当然に持っている人権を国として確認し、ときの為政者や多数派の横暴にブレーキをかけ、基本的人権を侵害するような法律や処分等を 無効にするものであって、国家のために国民の権利を制限し一方的に義務を課すためのものではありません。
国民の義務は「法律」で規定し、万一それが不当な人権侵害となる場合には「憲法」によって無効化するというしくみがとられているのです。「憲法に保障された基本的人権」が「法律によって課せられた義務」に優先するというのが立憲主義の基本的な考え方です。
ところが、自民党の改憲草案を見ると、表現の自由などにわざわざ制限規定が入れられ、国民には憲法尊重義務が課され、それ以外にも、家族仲良くといった、国が国民に義務付けるようなものではない道徳規範をふくめ、国家が国民に様々な義務を課しています。「常に公益及び公の秩序に反してはならない(自民草案第 12 条)」という義務に至っては、これを根拠に国民の側に広範な義務が課せられかねません。憲法を根拠にした人権侵害が生じてしまったら、憲法が私たちの人権を守る砦ではなくなってしまいます。
つまり、自民党改憲草案は「憲法」ではないのです。
ですから、今回の争点は、改憲ではありません。 「憲法を破壊し憲法でないものにするか、立憲民主主義の国で居続けるかどうか」です。 自民党の憲法改正草案に反対すると、対案を出せなどと言われることがありますが、憲法を破壊するという提案に、対案を出す必要はありません。
とても大事なことなのでもう一度言います。 今度の選挙の争点は、改憲ではなく、立憲民主主義の国で居続けるかどうか、です。 憲法の破壊を食い止めたうえで、冷静に憲法のあり方について議論をしませんか。
改憲も悪くないんじゃないかと思っているあなたに知ってほしい7つのこと

こちらのイラストもわかりやすいので、憲法くらべさんのfacebookからシェアさせていただきます。

憲法くらべ

[ 6. 憲法を巡る多様な意見をまとめるには時間が必要。戦前のような暗黒政治にNOなら、今度の選挙で意思表示しましょう。黙っていたら、新たな「戦前」の始まり。]

長々と書いてきましたが、誤解を恐れず、きわめて大胆・大雑把にまとめるとこういうことです。自衛隊が合憲なのか違憲なのか曖昧なままだったからこそ、軍隊の強大化に歯止めをかけ、専守防衛に徹することができた。だからアメリカの同盟国でありながら、朝鮮戦争にもベトナム戦争にも参加しなかった。おかげで戦闘で一人も殺さなかった。もしここで集団的自衛権や憲法改正を認めてしまったら、フルスペックの軍隊と無制限の海外派兵を認めることになる。自衛隊はアメリカと一緒になって「テロとの戦い」という戦争に突入することになる。武力でテロは防げない、むしろ逆効果であることをダッカでの悲惨な事件が証明してしまった(どう見ても普通にあの条文を読めば違憲に決まってるだろ、専守防衛でも問題あり過ぎとお考えの皆様、大雑把なまとめで申し訳ありません)。

軍隊や戦争を無制限に認めるということは、単に自衛隊員や軍人だけの問題ではありません。それは必ず、戦前の日本がそうであったように「政府の独裁」「人権の制限」「軍事費を増やして福祉予算を削る」という事とセットでやってきます。それは立憲主義の破壊です。それは新たな「戦前」の始まりです。

9条改正を含め憲法改正を巡っては国民の間にも野党間でも様々な意見があるのは事実です。だから今、野党が主張しているのは「安倍政権のもとでの憲法改悪に反対」という事です。自民党の改正案に対する対案は「現行憲法こそ対案」という事です。改正については様々な意見があるからこそ、時間をかけてじっくり議論すべきではありませんか ?

今回の選挙は、「憲法もどき」しか持たない前近代的国家に日本がなってしまうのかどうかの分かれ道です。自衛隊や自衛戦争をどこまで認めるか、憲法の条文上でどう扱うべきかという点はさて置き、日本が憲法にもとづく民主主義国家であってほしいと思う人は、ぜひ【自民党・公明党・お維新(注6)・新党改革・こころ・幸福実現・支持政党なし党】以外に投票してください。ぜひ投票に行きましょう。今回ばかりは野党に投票。棄権は現状の与党の政治を追認する事になります。

・トップの画像はこちらのサイトから。ネットでは「今の日本はこのとき危惧した通りだ」とかなり有名になった出版物の1ページです。この本は1988年に創価学会婦人部平和委員会の編纂で第三文明社から出版された『まんが・わたしたちの平和憲法』という本です。かつての公明党、創価学会は真剣に「平和」を求めていました。残念ながら今の公明党、創価学会は、大きく変わってしまいました。集団的自衛権も最初は反対のはずだったのに賛成してしまいました。平和の党は戦争の党に変わりました。

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・注1 例えば

憲法を「変える必要はない」が昨年3月の調査の48%から55%に増え、「変える必要がある」は昨年の43%から37%に減った。憲法9条についても「変えない方がよい」が昨年の調査の63%から68%に増え、「変える方がよい」は27%(昨年の調査は29%)だった。
9条「変えない」が増 安保法影響か 朝日新聞世論調査

この変えるほうがよいと答えた27%の人が「それはどうしてですか?」という問いに対して答えた(選択した)理由は、
a国際平和に、より貢献すべきだから。
b今の自衛隊の存在を明記すべきだから。
c日米同盟の強化や東アジア情勢の安定につながるから。
がほぼ3割ずつ。

一概に「変えた方がいい」と言っても、中身はかなり幅があるように思えます(自衛のための戦争も交戦権も自衛隊も認めるという点では共通でも)。変えた方がいいという意見は大きく分けると、二つの考え方があるのではないか。もちろん中間もあるだろうし、様々なバリエーションやニュアンスの違いもあるとは思いますが、大きく分けると二つ。一方で、「9条改正反対論」にも、内容の違ういくつかの案がある。これもきわめておおざっぱに分けると二つあると思う(注2)。

・「A 改正すべき 格上げ論」ひとつは、フルスペックの軍隊を認める。例えば、自民党の憲法改正草案(注3)。この草案では、「自衛権の発動を妨げるものではない」と規定しているが、「国際的に協調して行われる活動(中略)を行うことができる」とも規定しているので、「自衛権」の中に「集団的自衛権」も含めて認めている、また自衛隊の海外での活動も認めている。

・「B 改正すべき 制限論」もうひとつは、自衛隊を憲法上認める代わりに、様々な拡大解釈がなされないように、何らかの制限を明記しようという案。専守防衛のみ、個別的自衛権のみを認め、活動範囲は日本の領域内のみとする。領域外での活動を認める場合でも国連決議を条件とする、などの案。もう少し消極的なニュアンスなら、今まで通りの専守防衛に徹するなら、既にあるものは認めた方がいいという意見もこの中に入るだろう。

・「C 改正すべきでない 現状追認」改正反対論のひとつ目は、専守防衛、個別的自衛権の範囲内であれば、現憲法9条が禁止している戦力にあたらないので、改正する必要がないという意見。アバウトに言えば、従来の政府見解がこれであり、おそらく国民世論の多数派であろう。

・「D 改正すべきでない 厳格適用論」改正反対論のもうひとつは、9条改正なんてとんでもない、厳格に適用すべきであって、自衛の戦力(自衛隊)も認めない。時期はともかく、自衛隊は解散すべき。

こう分類すると「A 改正すべき 格上げ論」と「B 改正すべき 制限論」は、同じ「9条改正論」と一括りにできないほど内容というか、なぜ改正するかという方向性が違う。一方で、「B 改正すべき 制限論」と「C 改正すべきでない 現状追認」は、中身がほぼ同じである。憲法9条を改正すべきかどうかではなく、自衛のための戦争と戦力(自衛隊)を認めるかどうか、という基準で分けるとわかりやすい。

「A 改正すべき 格上げ論」はもちろん認めるという意見。自衛の中には集団的自衛権も認めるし海外での活動も認める。「D 改正すべきでない 厳格適用論」は、自衛のためであっても認めない。

「B 改正すべき 制限論」と「C 改正すべきでない 現状追認」は、自衛の戦争と自衛のための戦力である自衛隊は認める。ただし「自衛(個別的自衛権と専守防衛)」に限る。それを憲法上でどう扱うかが違うだけである。現憲法は「自衛(個別的自衛権と専守防衛)」を認めていると考えている人は「C 現状追認」。現憲法では自衛隊は合憲なのか違憲なのか、自衛は認めているのか自衛も認めていないのか曖昧なのでこの際はっきり認めよう、どうせ認めるなら拡大解釈の余地がないよう制限も憲法の条文で明記しようと言う考えが「改正B案 制限論」。

・注2
もちろん、4つのパターンに分類できるほど単純ではないことは承知の上、議論を整理するために許していただきたい。
「自衛戦争」と「(戦力としての)自衛隊」に関する世論調査によると様々な意見がある。
この調査で、自衛戦争は認めるが9条改正必要なしは65.2%。戦力としての自衛隊は認めるが9条改正必要なしは67.5%。これがほぼ「C 改正すべきでない 現状追認」にあたるだろう。

◆「自衛のための戦争」「(戦力としての)自衛隊」について、これを「認める」と答えた人のうち(憲法9条との整合性を図るために)これを「改める必要がある」と答えた人は、「自衛のための戦争を認める」では24.3%。「(戦力としての)自衛隊を認める」では18.6%でした。
【「認める」という人の中で、憲法9条との整合性を図るための改憲の必要性の有無についての考え】
自衛戦争を認める  改憲の必要あり    必要なし   わからない・無記入
男性 222人     55人 24.8%    143人 64.4%    24人 10.8%
女性 140人     33人 23.6%     93人 66.4%    14人 10.0%
男女 362人     88人 24.3%     236人 65.2%   38人 10.5%
※必要あり+必要なしの合計は324人 それを母数とする「必要あり88人」の%は27.2%です。

戦力としての
自衛隊を認める  改憲の必要あり   必要なし      わからない・無記入
男性 258人   47人 18.2%    177人 68.6%    34人 13.2%
女性 182人   35人 19.2%    120人 65.9% 2   7人 14.8%
男女 440人   82人 18.6%    297人 67.5%    61人 13.9%
※必要あり+必要なしの合計は379人 それを母数とする「必要あり82人」の%は21.6%です。

そう答えた人(改憲の必要あり)に対して「では、どんなふうに改めればいいか?」と訊ねたら、返ってきた答えはこうでした。
・9条2項の「戦力は保持しない」「交戦権は認めない」を「自衛のための戦力は保持する」「自衛のための交戦権は認める」と改める。
・「自衛のための戦力として自衛隊の存在・活動を認める」と明記する。
・自衛隊を自衛軍として明記すべし。
・どこの国とも軍事同盟を結ばない。非同盟・中立を謳いつつ軍隊保持と自衛戦争を認める。
・海外派兵は認めないと明記して、専守防衛を徹底させることを明文化すべし。
・政府や法制局の解釈で事実上認めるというのは危険。交戦権を認める、自衛戦争は可、戦力としての自衛隊を認めると憲法に明記すべきだ。(男女問わずこの意見多し)

逆に、「自衛のための戦争」「(戦力としての)自衛隊」は認めるが、憲法9条を「改める必要はない」と答えた人に対して、「それでは現行憲法との整合性が図れないとは考えませんか?」と訊ねたところ、以下のような答えが返ってきました。
・現実的には認めているのだから、わさわざ9条を改める必要はない。(男女問わずこの意見多し)
・政府がある程度の解釈で対処するのは仕方がない。
・北朝鮮や中国が今のような状況だから「認める」と答えているのであり、本当は認めたくない。なので、改憲などしないほうがいいと思っている。
・現行憲法は侵略戦争は禁じているが自衛戦争までは禁じていない。なので改憲の必要はなし。
・戦力保持も交戦も認めてないけど、実際には戦力としての自衛隊は存在するし安保法制によって戦争もできるんだから、改憲の必要はなし。解釈でいけばいい。
・戦力として自衛隊を保持するというのは、9条2項に反しているかもしれない。だけど、改憲の必要はない。なぜなら国会が承認した防衛予算によって自衛隊は存在し活動しており違法な存在ではないのだから。
※この人たちはいずれも9条の条文を改める必要はないと言っています。つまり一般的な世論調査では「護憲派」「9条支持」に分類されています。

「自衛戦争も戦力としての自衛隊も認めない」と答えた人の中にすら、ごくまれに「改憲の必要あり」と回答している人がいる。解釈の余地のないように改憲すべきだという意見だ。
単純に改憲派=武装派(あるいは軍事主義)、護憲派=非武装派(あるいは平和主義)ではないようです。
また、現実には戦力である自衛隊を「憲法が禁じた武力にあたらない」という解釈を政府がとってきたため、『自衛のための戦力は、戦力ではなく「防衛力」』『自衛隊が戦うことになったとしても、それは「防衛」であって「戦争」ではない』という意見もあり、問題を複雑化させている。さらに安保条約が絡んでくるともっと複雑だ(自衛のための戦争は認めないが「日本は戦争しないで、米軍に戦ってもらえばいい」という意見もある)。

詳細はリンク先記事を見ていただきたいが、本当に多様な解釈・意見があって、この中のどれかの意見が国民の多数派になるということは簡単ではない。自衛のための戦争も、自衛のための戦力としての自衛隊も認めるという意見が多数派だがその内容は様々だ。また、自衛戦争や自衛隊を認める人の中でも改憲すべきという意見は多数派ではない(自衛戦争を認めるが、9条改正必要なしは65.2%。戦力としての自衛隊は認めるが、9条改正必要なしは67.5%)。自衛権(自衛のための戦争)は認めるが、自衛のための軍隊(常備軍)は認めないという理屈も理論上はあり得る。

自衛戦争と自衛のための軍隊を認める意見の中には、集団的自衛権まで認めるか、専守防衛・個別的自衛権だけに限定するか、それぞれどれくらいの割合でいるのかも調査してほしかった。

いずれにせよ、日本の防衛をどうするのかということと、それを憲法にどう書き込むかは様々な意見があり、簡単にどれかの案で国民的合意が得られるという状況ではない。自民党は、今度の選挙で勝てば最短で2016年中に改正発議をすると見られているが、相当長期にわたり時間をかけて議論すべき問題だ。野党の中にも様々な意見がある。だから今回の選挙での野党の合意は「安倍政権の憲法改正に反対する」。

・注3

第二章 安全保障
第九条
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、用いない。
2 前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。
第九条の二
我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。
2 国防軍は、前項の規定による任務を遂行する際は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
3 国防軍は、第一項に規定する任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。
4 前二項に定めるもののほか、国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める。
5 国防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪又は国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければならない。
第九条の三
国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない。
日 本 国 憲 法 改 正 草 案

・注4
「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」という憲法前文も、「第九十七条  この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」という規定も、改正草案では丸ごと削除しています。

「第十章 最高法規」の一番最初の97条で永久の権利を規定し、98条で違憲の法律は無効、99条で憲法擁護義務を定めているこの構成を見ても、(明文ではないにしろ)基本的人権を制限する法律は無効であり、この人権項目を含む憲法を公務員は擁護しなければならない、そしてわざわざ「将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」と書き込んでいるところから考えると、その権利を侵すような改正を禁止しているように読める。9条で「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」とわざわざ「永久」という字句を使っているのも同様の理由であろう。

・注5

緊急事態の宣言
第九十八条
内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
2緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。
3内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。
また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。
4第二項及び前項後段の国会の承認については、第六十条第二項の規定を準用する。
この場合において、同項中「三十日以内」とあるのは、「五日以内」と読み替えるものとする。

第九十九条
緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
2前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の承認を得なければならない。
3緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。
この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。
4緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。

・注6
おおさか維新はウルトラ右翼の改憲勢力です。例えば、こちらとか、こちら


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9条改憲賛成という人にこそ知ってほしい、もはや憲法とは言えない自民改憲案の中身。たった一人の判断ですべてをチャラにできる緊急事態条項。【2016参議院選】” への1件のフィードバック

  1. 徹底した不信感がこの勢力を覆う。戦前指導体制の罪は国家と国民との間の拭いきれない相互不信をその後長く確立したことにあった。国民は国家を信じることなく、過剰に自衛力を惧れ、戦後民主主義は政治家をして国民に現実を隠させしめた。国家国民の統一を図り、国民の手で国民を守る新しい体制の確立が急務である。安倍政権はなお国民のことを信用せず、現実から逃げており、国民が拒みも認めもしていない憲法をいつまでそのままにするのか。日本国憲法は日本人の手によってのみ書かれなければならない。現在、この国で生活する1億の国民の、おそらく誰一人として、この憲法を良しとも悪しとも判断し制定したことがない。変化なき戦後の遺物に縛られ著しく変化する内外情勢に置き去りにされる国土国民国体を思うとき、なんと嘆かわしく、また愚かしいことであるか。憲法を守り、民主主義を守りながらも憲法を変えることができるというのに、護憲派なるものは、護憲を、憲法やら民主主義やらの対義語のように口にしてわめき散らす様を見つめるとき、国家はいよいよ、新しい世代が築き上げねばらないことに気がつくのである。平成の世に生を受け、戦後とは関係のない我々の世代が、どうして愚かなる老害の世代のトラウマを引き継ぎ、子孫延々を永久に危険に晒す愚行を犯す非難の誹りを甘んじて受け入れることを反発なく期待できようなどと考えようか? 今、国会は徐々にかつて大勢を占めていた似非なる平和主義者を追放しようとしている。彼らは徐々に国民に選ばれなくなるだろう。あなた方もまた冷戦の異物なのである。我々新しい世代は、あの戦争を過度な正義も過剰な恐怖も心から排し、歴史の一項として冷静に見つめ、分析できる者たちなのだ。あなたがたの国家不信、国体不信、ひいては全体的日本人不信に我々を振り回すな。憲法を変えても戦争は起きない。不戦の誓いは引き継がれよう。しかし同時に我々はこの国を守る意思を示し続け、子々孫々にこの国を国として譲る義務も持つ。この義務は例え憲法、法律、条令、政令に明示的に記録されておらずとも、国家民族の責務である。我々の世代はあなたがた戦後世代と違い、国家を根拠もなく不信することも、戦前世代と違い、国家をいたずらに信奉することもない。今、この国において、国家と国民との新しい信頼関係ができつつあるなかにおいて、あなたがた戦後世代が余計な雑音を入れようとしていることを、我々はしっかり認識しており、あなたがたにながされることはない。戦前指導体制の反動、及び占領政策の影響をもろに受けた世代やその世代から教育を受けた世代であるあなたがたが築いた時代にあって、国家と国民とのあいだの相互不信はあなたがたの全てに影響を与えた。我々はこの関係を相互の側から修復する役目を持つ世代である。上の世代の役割はもう終わろうとしている。現に今にも、新しい世代に沿う政党が生き残り、古い世代の縛られた政党は支持されず、国会を去るだろう。それもまた貴重なる日本の民主主義の総意である。

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