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改憲こそが選挙の最大争点。緊急事態条項で日本はアウト。争点隠しするも本音発掘される。【2016参議院選】

改憲派争点ではない ?

「改憲」争点隠しを狙うが、次々発掘される改憲派の本音。

安倍晋三首相が党首討論会で、「(改憲を)選挙で争点とすることは必ずしも必要はない」と言いつつ、「参院選の結果を受け、どの条文を変えていくか、条文の中身をどのように変えていくかについて、議論を進めていきたい。次の国会から憲法審査会を動かしていきたい」と述べた(注1)。

えっ、次の国会で議論するなら、今回の選挙の重大な争点でしょ。

 19日行われた動画配信サイト「ニコニコ動画」での与野党9党首による討論番組で、安倍首相は憲法改正について「選挙の結果を受け、どの条文を変えていくか議論を進めていきたい」「次の国会から憲法審査会を動かしていきたい」と発言した。秋の臨時国会で与野党の具体的な議論を始めたいとの意欲を示したものだ。

 一方で、改憲が22日に公示を迎える参院選での争点になるかどうかについては、「どの条文か決まっていないからこの選挙では議論できない。必ずしも争点とする必要はない。決めるのは国民投票だ」として否定。その上で、「私たちは党草案(自民党憲法改正草案)を示しており、何も隠していない」と強調した。

 世論は改憲について消極的な意見が多い。争点化を避け、参院選で勝利すれば、「もともと草案に書いてあった。信を得た」として改憲に突き進むのだろう。安倍首相の毎度の手法だ。

 衆院に続き、参院でも改憲発議に必要な3分の2の勢力を安倍首相に与えたら、いよいよ暴走政権の思うがままだ。
日刊ゲンダイ 「憲法改正」争点隠し露骨 安倍首相が党首討論でホンネ

これまで安倍総理は、何度も憲法改正(壊憲)に意欲を見せつつ、選挙が近づいてきたら「票が逃げる」という理由で改憲を争点化する事を避けようとしてきた。安倍総理自身も6月22日の参議院選公示日の演説でも憲法にはひと言も触れなかった(注2)。

憲法改正は自民党の公約の一番最後に小さく書かれている。何とも姑息な手段だ。騙されちゃいけない。過去にも、何度も騙されてきた。前回(三年前)の参院選では、アベノミクスが争点だと言って選挙が終わったら、特定秘密保護法。15年12月の総選挙では消費増税の先送りの信を問うと言ったのに、選挙後の国会で一番問題になったのは安保法制。今回も「消費増税の先送り」なんかが争点じゃないですよ。庶民にしてみれば「増税先送り」はありがたいが、そんなのは安倍総理の手柄でも何でもない。むしろ、増税できるように経済を立て直すと言っておきながら、立て直せなかったのだからむしろ失点であり、アベノミクスの失敗の象徴である(アベノミクスで暮らしは豊かになった ? も大事な争点だが、今回のテーマではないのでいずれまた次回)。

最大の争点は「憲法改正」。まるで戦前かと思わせる自民党の憲法観。

facebookでこんな投稿を見つけました。わずか2分30秒の動画です。是非見て下さい。

・憲法を変える時が来た。もうこれ以上延ばす事はできない。

・国民主権、基本的人権、平和主義、この三つをなくさなければホントの自主憲法とは言えない。

・日本にとって一番大事なのは皇室であり、国体である。

・国防軍を創設する。

・尖閣を軍事利用しよう。

編集前の動画はこちら。(この「創生日本」の会長は安倍晋三)

稲田朋美氏は他にもこんな発言も。

・国民の生活が大事という政治は間違っている

もっと強烈なのは、「国を護るには血を流さなければいけないんです!」

「国のために命を捧げる覚悟を」

現憲法と正反対の考え。
「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」
「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」
要するに武力によらない方法で解決しましょという現憲法の考え方をもうやめる、そして、人の命の尊さも人権も無視するという事ですね、自民党は。
18歳、19歳で初めて選挙権を行使する皆さん。よく考えましょう。学校で習ったのとはまったく逆の事を、仲間内ではボロボロしゃべってます(こっちが本音なんでしょうね)。安倍氏の「戦後レジームからの脱却」て、結局、民主主義を破壊して戦前のような世の中をもう一度、という事なんだ。

「国に命をかけるものだけに選挙権を」
ポスト安倍・稲田朋美が「男子も女子も自衛隊に体験入学すべき」! 過去には「国に命をかける者だけに選挙権」発言も
この人が自民党政調会長で次期総裁候補って、何かの冗談ですか。たまたま自民党に紛れ込んだ「過激分子」ではない。自民党政調会長で次期総裁候補ですよ。
石破氏も2014年5月のNHKの討論で「国際紛争でアメリカの若者が血を流しているのに、日本の若者が血を流さなくていいのか?」と発言しました。ちなみに公明党は、この時は集団的自衛権に反対(慎重 ?)だったのにいつの間にか賛成になりました(集団的自衛権の行使容認を支持した創価学会)。

いやびっくり、マジですか。・・・・・これが日本の政権与党の発言である(注3)。戦前か、でなければ北朝鮮か ? と思わせる感覚。この本音を隠して選挙をやり、選挙が終わったらやりたい放題か。

自民党憲法改正草案の中で最も危険なのは「緊急事態条項」。これが通れば日本はアウト。ファシズムそのもの

合区の解消とか教育の無償化とか環境権とか夫婦別姓とか、様々な口当たりのいい口実で「憲法を改正しよう」という意見があるが、そんなものは「本心」ではないし、わざわざ憲法に書き込まなければ実現できないというものでもない。
彼らの本命は、9条を改正して国防軍を持つ事や、基本的人権を制限する事だ。自民党憲法改正草案を読めばよくわかる(注4)。

9条の改正も基本的人権の制限もヤバイが、なんと言っても一番ヤバいのは「緊急事態条項」の新設だ。以前の記事でも書いたが、詳細は以前の記事を見ていただくとして、簡単にまとめるとこうだ(注5)。

・大災害の時に必要と自民党は言っているが、専門家も被災地の首長も、いらない、むしろ危険と言っている。

・「法律と同一の効力を有する政令」を作る事ができ、予算審議なしに財政上必要な支出を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。国会の承認は事後承諾でよい。要するに国権の最高機関である国会は事実上無力化され、本来対等であるはずの地方自治体は国の下請け機関となり、内閣がオールマイティの権限を持つ。

・「何人も、国その他公の機関の指示に従わなければならない」個人もまた国の指示通りにしろと。国民の権利は制限される。基本的人権は「尊重」するだけでよい。国の(権力者の)暴走に歯止めをかけるための憲法は、国が地方自治体や個人に向かって命令するためのものに変質する。

・「緊急事態条項」を憲法で定めている国でも、これほど強力な権限を、しかも無期限に行政府(内閣)に与えている例はない。

安保法制賛成の人もアベノミクス賛成の人も、ちょっと考えて欲しい。安保法制やアベノミクスに賛成か反対かは、特定の政策に対する意見だ(かなり国の根幹に関わる意見ではあるが)。しかし、「緊急事態条項」が通れば、賛成であれ反対であれそうした意見を言う機会も奪われ、それについて審議する国会も機能停止だ。はっきり言って独裁でありファシズムだ。もし、「緊急事態条項」が通れば、衆議院は解散されないし、政令によって選挙制度を改悪する事も可能だ。今回の参議院選挙が民主主義制度の下で行われる最後の選挙になるかもしれない。

自民党や公明党やおおさか維新を支持する人、支持政党なしの人も考えて欲しい。こういう独裁ファシズムの国に日本がなっていいのか。曲がりなりにも「民主主義国家」であって欲しいと思う人は今回だけでも自民党・公明党・おおさか維新・こころ・改革以外の政党に投票して欲しい。

またしても安倍首相は、憲法改正派が2/3を取るのは100%むり、などと嘘を言っているが、すでに衆議院では改憲派が2/3以上。参議院の非改選組は改憲派が多数なので改選組121議席のうち改憲反対派が49議席以上取らないと憲法改正は発議されてしまう(注6)。

議席数2/3を与えてはならない

 参院の定数は242議席で改憲発議ができる3分の2は162議席。非改選の121議席のうち自民が66、公明が11。改憲発議の際には賛成に回るとみられるおおさか維新の会と日本のこころを大切にする党がそれぞれ5、3議席を持っているので、合計で85議席だ。

 今回の選挙で自公+おおさか維新の会などで77議席を確保できれば改憲発議が可能になる。直近の調査では、自民が50台後半を伺う勢いがあり、公明も前回の11から数議席の上乗せが可能とみられ、さらにおおさか維新の分を上乗せすると70議席台半ばが十分視野に入る。

 そのうえ、非改選議員の無所属や少数政党の議員なかにも松沢成文議員、渡辺美知太郎議員、平野達男議員、アントニオ猪木議員など4-5名の改憲賛成派がいるとみられ、自公とおおさか維新で70台半ばまで議席が確保できれば、改憲発議の77議席確保が見えてくる。参院選は改憲か否かが改めて問われる選挙となりつつある。参院選、改憲派3分の2確保の勢い、発議可能に

仮に発議されても国民投票で止めればいいではないか、という考えもあるだろう。しかし国民投票が具体的にどのように行われるのかはまだ未定だし、そこでもまたどのようなごまかしや誘導が行われるかもわからない。国民投票を「実施」するのは政権与党側だ。今でさえこれだけの「争点隠し」をしているのだから、国民投票もどのようなオブラートで包まれるかわからない。

もう一度言いますが、支持政党なしの皆さん、自民党・公明党・おおさか維新・こころ・改革を支持する皆さん。戦前のような世の中になってもいいとお考えなら別ですが、そうでないなら今回だけは野党に投票するよう考えていただけませんか(棄権や白紙はダメです)。7月10日が自分の意思表示ができるラストチャンスかもしれません。

・画像上はEveryone says I love you !から、画像下は健康になるためのブログから。


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・注1
東京新聞 安倍首相「次の国会から改憲議論」 参院選後 具体的に条文審査

・注2
毎日新聞 2016参院選/1 憲法(その1) 改憲言及「票逃げる」 自民が争点隠し

毎日新聞 2016参院選/1 憲法(その2止) 日本会議、改憲へ「世論」演出

朝日新聞 重視政策に憲法、自公候補ゼロ 朝日・東大谷口研調査

朝日新聞 (社説)参院選 改憲の是非 正面から問わぬ不実

争点隠し選挙。与党候補55人のうち街頭演説第一声で改憲に触れたのはたった1人。54人は黙秘(毎日調べ)。

・注3
こんなまとめサイトも。安倍会長の創生「日本」で長勢甚遠元法務大臣「国民主権、基本的人権、平和主義、この三つをなくさないと」

・注4
現憲法との違いがわかる解説サイトはこちらこちらこちらなどなどネット上にたくさんあります。

この本は自由民主党(自民党)の憲法改正草案について、わかりやすく解説した(^_^)という、あたらしい憲法草案のはなし、ぜひ広めたい。

動画なら憲法が変わっちゃったら、どうなるの? ~ 自民党案シミュレーション ~

・注5
週刊女性のこちらの記事「参院選の争点:安倍首相が目論む『緊急事態条項』とは?」がわかりやすい。

・注6
ネットで流れてくる情報では、改憲反対勢力が今回の選挙で何議席取れば阻止できるのかという点で、47〜54までバラツキがあります。無所属をどう扱うかでかなり数字が違ってきますが、ある方から教えていただいたこのサイトは無所属も細かく評価しています。

非改選は改憲派が89、護憲は32(その内訳はリンク先サイトを見て下さい)。合計121。242の1/3は、81。81議席必要なので、非改選32を引くと、改選で49議席が必要(改憲勢力側は73議席取れば2/3獲得)。ただし、病欠や公約撤回(裏切り)がないと想定してのぎりぎりの数字です。ちなみに与党勢力を半数以下にするためには野党が90議席必要 !!

http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20160604/1465061078


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報ステが「9条押しつけ論」に反論。憲法制定過程に関する動画・資料を集めてみた。9条だけじゃない、25条生存権も日本側のオリジナル。

憲法9条は誰が発案したか

昨日2月25日の報道ステーションが 「憲法9条押しつけ論」を検証する特集を放送した。

「独自・総理と祖父“改憲の原点”・「岸時代の調査会」肉声発見」
今回発見した音声データには憲法調査会が開いた公聴会でのある証言が残されていた。憲法制定当時、中部日本新聞の政治部長だった小山武夫氏のものだ。
音声データには、中部日本新聞元政治部長・小山武夫が「第9条の発案者に限定した質問に、幣原総理は「私がマッカーサ元帥に申し上げて第9条の条文になった」とはっきり言った」との公聴会での証言が残されていた。
調査会はGHQの最高司令官を務めたマッカーサー本人からも書簡で直接証言を得ていた。
木村草太・首都大学東京准教授は締めの発言で「押し付け憲法論のまま思考停止している人が多くいる。今の憲法に憎しみを持ってる方はそれを解放しないと、建設的な改憲論は永遠に不可能だ。これをまず自覚すべきだと思う。」 とコメントした。

私自身は残念ながらその放送を見ていないが、憲法制定過程に関する動画・資料を集めてみた。
まずは、昨日の報道ステーションの放送内容。

総理と祖父“改憲の原点” 岸時代の調査会肉声発見 (約17分間) 報道ステーション

他にもいくつかweb上にアップされている(注1)。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ついでに、憲法制定過程に関する動画や資料も集めてみた(注2)。

日本国憲法誕生 全編

日本国憲法 誕生の真相 ~ 映画「日本の青空」(30分ダイジェスト) Truth of “The Birth of the Constitution of Japan”
「日本の青空」は、終戦後の憲法作成に尽力した鈴木安蔵(YASUZO SUZUKI)という在野の憲法学者(Constitutional scholar)を描いた映画です。
ストーリーは女性編集者(田丸麻紀)が鈴木安蔵の足跡を取材する、というかたちで描か­れています。

さて次に、憲法9条は幣原が提案したという話に戻します。

幣原喜重郎はなぜ平和条項を提案したのか。マッカーサーはなぜそれを受け入れたのか。そしてGHQはなぜ憲法制定を急いだのか。

報道ステーションが独自という「音声テープ」が放送されるのは初めてかもしれませんが、「憲法9条は、幣原総理が発案した」という事自体はかなり有名な話です。
戦前の大日本帝国から生まれ変わった日本、平和主義日本を国際世論にアピールする、その事によって、天皇の戦犯追及と天皇制廃止を免れるという点で、幣原とマッカーサーは意見が一致しました。

いわゆる「平野文書」(注3)は以前から知られていました。
かなり長い文書ですが、その中から一部を引用しておきます。(全文はリンク先を)

幣原喜重郎元首相が語った 日本国憲法 – 戦争放棄条項等の生まれた事情について 「幣原先生から聴取した戦争放棄条項等の生まれた事情について」
問  よく分りました。そうしますと憲法は先生の独自の御判断で出来たものですか。一般に信じられているところは、マッカーサー元帥の命令の結果ということになっています。尤も草案は勧告という形で日本に提示された訳ですが、あの勧告に従わなければ天皇の身体も保証できないという恫喝があったのですから事実上命令に外ならなかったと思いますが。
答  そのことは此処だけの話にして置いて貰わねばならないが、実はあの年(昭和二十年)の暮から正月にかけ僕は風邪をひいて寝込んだ。僕が決心をしたのはその時である。それに僕には天皇制を維持するという重大な使命があった。元来、第九条のようなことを日本側から言いだすようなことは出来るものではない。まして天皇の問題に至っては尚更である。この二つに密接にからみ合っていた。実に重大な段階にあった。
 幸いマッカーサーは天皇制を存続する気持を持っていた。本国からもその線の命令があり、アメリカの肚は決っていた。ところがアメリカにとって厄介な問題が起った。それは濠州やニュージーランドなどが、天皇の問題に関してはソ連に同調する気配を示したことである。これらの国々は日本を極度に恐れていた。日本が再軍備をしたら大変である。戦争中の日本軍の行動は余りに彼らの心胆を寒からしめたから無理もないことであった。殊に彼らに与えていた印象は、天皇と戦争の不可分とも言うべき関係であった。日本人は天皇のためなら平気で死んで行く。恐るべきは「皇軍」である。という訳で、これらの国々はソ連への同調によって、対日理事会の票決ではアメリカは孤立化する恐れがあった。
 この情勢の中で、天皇の人間化と戦争放棄を同時に提案することを僕は考えた訳である。
 豪州その他の国々は日本の再軍備を恐れるのであって、天皇制そのものを問題にしている訳ではない。故に戦争が放棄された上で、単に名目的に天皇が存続するだけなら、戦争の権化としての天皇は消滅するから、彼らの対象とする天皇制は廃止されたと同然である。もともとアメリカ側である濠州その他の諸国は、この案ならばアメリカと歩調を揃え、逆にソ連を孤立させることが出来る。
 この構想は天皇制を存続すると共に第九条を実現する言わば一石二鳥の名案である。尤も天皇制存続と言ってもシムボルということになった訳だが、僕はもともと天皇はそうあるべきものと思っていた。元来天皇は権力の座になかったのであり、又なかったからこそ続いてきたのだ。もし天皇が権力を持ったら、何かの失政があった場合、当然責任問題が起って倒れる。世襲制度である以上、常に偉人ばかりとは限らない。日の丸は日本の象徴であるが、天皇は日の丸の旗を護持する神主のようなものであって、むしろそれが天皇本来の昔に還ったものであり、その方が天皇のためにも日本のためにもよいと僕は思う。
 この考えは僕だけではなかったが、国体に触れることだから、仮にも日本側からこんなことを口にすることは出来なかった。憲法は押しつけられたという形をとった訳であるが、当時の実情としてそういう形でなかったら実際に出来ることではなかった。
 そこで僕はマッカーサーに進言し、命令として出して貰うように決心したのだが、これは実に重大なことであって、一歩誤れば首相自らが国体と祖国の命運を売り渡す国賊行為の汚名を覚悟しなければならぬ。松本君[13]にさえも打明けることの出来ないことである。したがって誰にも気づかれないようにマッカーサーに会わねばならぬ。幸い僕の風邪は肺炎ということで元帥からペニシリンというアメリカの新薬を貰いそれによって全快した。そのお礼ということで僕が元帥を訪問したのである。それは昭和二十一年の一月二十四日である。その日、僕は元帥と二人切りで長い時間話し込んだ。すべてはそこで決まった訳だ。

要するに、憲法9条と象徴天皇制はセットというわけだ。

日本国憲法の制定過程(その9) 深謀遠慮の首相幣原喜重郎というサイトでは、幣原が改正憲法に戦争・戦力放棄条項を入れることにどういう意図をこめたかが検証されている。

 第一の意図は、天皇制の存続である。
 第二に、しかし、天皇から軍事的政治的実権を剥ぎ取ったうえで存続させるということを日本側から発案することは実際的には不可能であった。そんな提案を内閣がすれば、頭に血の上った連中が内閣は国体と祖国を売り渡す売国奴であるという猛反対をすることは目に見えており、大混乱に陥るであろう。そこで、幣原は戦争・戦力放棄をGHQから出させようと考えた。 
 第三の意図は、理想として世界に軍備廃絶による恒久平和をもたらすために自発的戦争放棄国となるという掲げつつ、緊迫の度を増しつつあった資本主義と共産主義の戦場に、日本が米軍の尖兵として引っ張り出され、血を流させられることを未然に防止することであった。

詳細はリンク先記事をお読みいただきたい。
リテラにも面白い分析がある。

改憲に動き始めた安倍首相の「押しつけ憲法論」は嘘だらけ! GHQ支配の元凶は自民党とお前のじいさんだ!
 当時の政治指導者が単に戦争放棄という理想主義に燃えただけではなく、さまざまな思惑や深慮遠謀に基づいて、9条の挿入を提案したのがよくわかる。安倍にもぜひ読んでもらいたい。
幣原にとって最大の眼目は天皇制の維持安泰だった。これは「占領に天皇を利用する」というマッカーサー(アメリカ側)の思惑とも一致していた。だが、アメリカ以外の連合国は天皇の戦争責任追及を強く求めていた。天皇がいる限り、日本が再び軍国主義化する可能性があるのではないかと恐れていたのだ。そこで幣原はマッカーサーに戦争放棄という突拍子もない提案をする。戦力不保持を宣言すれば、 天皇制が残っても日本は二度と軍国主義化することはない。いぶかるマッカーサーを幣原はじゅんじゅんと説く。
 原爆という新兵器が登場した以上、いままでのような軍備は役に立たない。最終的に各国は世界同盟のようなもの溶け込んでいくしか平和を維持する方法はないのではないか−−−−−いまでいう国連中心主義の理想である。これを聞いたマッカーサーは感激し、幣原の提案を受け入れることにした。だが、敗戦国の日本からこれを言い出すのははばかられる。日本国内を説得することも不可能だ。そこであえて、GHQから“押し付け”られた形にしてもらうことにしたというのだ。なんたる“謀略”(笑)。
 安倍との役者の違いが分かるだろう。
 しかも、幣原にはもう一枚、秘めたる意図があったという。それは緊迫化する米ソ冷戦において日本の青年がアメリカの尖兵になるのを防ぐことだった。朝鮮戦争の勃発後、マッカーサーは幣原に嵌められたことを悟るが時すでに遅しだった。9条という“押し付け”られた防波堤の存在によって、日本の戦後復興と驚異的な経済成長が成し遂げられたことはすでに書いた。これが国際政治の駆け引きというものなのだ。
 翻って安倍政権は、これとまったく逆のことをやっている。自衛隊員を守るどころか、アメリカの戦争に差し出そうとさえしている。それで得られるものは実はなにもないというのが新安保法制の実体だ。

以前の記事【「押しつけ憲法論」のでたらめ – 自民党改憲漫画パンフがひどすぎる】で、なぜ、幣原とマッカーサーは憲法に平和条項を挿入したのか、なぜマッカーサーは憲法改正を急いだのか、を次回書くと宣言しましたが、他にも書くべき事が多くて(^ ^ ; なかなか書けないでいました。
この際なので、ここで書いておこうと思います。

1945年12月16日からモスクワで始まった米英ソ3国外相会議で、極東諮問委員会(FEAC)に代えて極東委員会(FEC)を設置することが決まり、FECが対日占領政策の最終決定権を持つことが決まり、マッカーサーはFECの下に置かれ、その決定に従うこととなり、そのFECが46年2月26日から活動を開始することになったことが最大の要因である。FECには天皇の戦争責任や天皇制の存続に対して極めて厳しい態度を示しているソ連やオーストラリア、ニュージーランド、フィリピンのような委員もいたが、マッカーサーは天皇制を存置することが占領政策を円滑に進める上で必須の要素と見なしていたため、FECが活動を開始する前に、憲法改正の大綱を定め、既成事実を作ってしまうことが得策だと考えたのである。
 つまり、マッカーサーと日本政府とは天皇の安泰と天皇制の存続という点で利害が一致しており、それがマッカーサーがGHQ草案を作り、日本政府が受け入れた一番の理由であった。しかし、GHQ草案の受け入れにはもうひとつの隠れた目的があった。それは、保守派政治家の生き残りの手段であった。実際、ホイットニーは2月13日の会談において、「マッカーサー将軍は、これが、数多くの人によって反動的と考えられている保守派が権力に留まる最後の手段であると考えています」と述べているが、この頃、進歩党は前代議士274名中260名、自由党は45名中30名が第一公職追放令(46年1月4日)により追放されていた一方で、急速に勢力を伸ばした共産党は、社会党との人民戦線結成を模索していた。危機に陥った保守派政治家にとっては、思いきった改革案を提示する以外に、選択肢はなくなっていたのである。そして実際、GHQ草案を基にした政府の憲法改正草案が3月6日に発表されると、「改革の機運を先取した」保守政党は支持を集め、4月10日に行われた総選挙では、自由党が躍進し、政権を獲得した。したがって、GHQ草案は単に占領軍の圧力によって押し付けられたというよりも、保守派政治家の生き残り策として受容されたのである。さらに経済界も、政府の憲法草案について、日本社会の社会主義化を防ぎ、天皇制護持と資本主義存続という点で「大きな枠がはめられ、将来に対する一応の見透しがついた」として歓迎した(小熊英二『民主と愛国』160-161頁)。
http://d.hatena.ne.jp/asobitarian/20130601/1370051679
(リンク先サイトはなぜか削除されています)

極東委員会(FEC)の設置前に、日本が生まれ変わった事をアピールできる憲法改正の道筋にめどをつける必要があった。

・年表は以前の記事参照。
1946年2/22 閣議、GHQ草案受入れ決定。
1946年2/26 極東委員会、ワシントンで第1回会議(11か国で構成。ソ・豪・英、天皇制廃止を主張)。

天皇の安泰と天皇制の存続、保守派政治家の生き残りの為に、マッカーサーは幣原の提案を受け入れ、日本政府はGHQ草案を受け入れた。
日本国憲法は押しつけだと主張する安倍自民は、その「押しつけ」のおかげで、自分たちの先輩である保守政党・進歩党や自由党が生き延びた事をどう見ているのであろうか。
今の憲法よりもさらにラディカルでリベラルな(例えば天皇制を廃止して共和制の国にするとか)憲法が制定され、保守政治家が追放され、共産党や社会党が勢力を伸ばした方がよかったとでも ? 。

9条だけじゃない、第25条「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」も日本側のオリジナル。

「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」はGHQの原案にはなく、日本側が日本の民間団体、鈴木安蔵、高野岩三郎らの「憲法研究会」の憲法草案要綱にあった内容を盛り込んだものです。
以前の記事【「押しつけ憲法論」のでたらめ – 自民党改憲漫画パンフがひどすぎる】では一言しか触れませんでしたが、この点についてももう少し補足しておきます。

生存権の規定は次のようになっています。

GHQ草案
第二十四条 有ラユル生活範囲ニ於テ法律ハ社会的福祉、自由、正義及民主主義ノ向上発展ノ為ニ立案サラルヘシ
自由、普遍的且強制的ナル教育ヲ設立スヘシ
児童ノ私利的酷使ハ之ヲ禁止スべシ
公共衛生ヲ改善スべシ
社会的安寧ヲ計ルヘシ
労働条件、賃銀及勤務時間ノ規準ヲ定ムヘシ

憲法草案要綱
一、国民ハ健康ニシテ文化的水準ノ生活ヲ営ム権利ヲ有ス

日本国憲法
第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

読んでいただいてわかる通り、日本国憲法の条文は「憲法研究会」憲法草案要綱の表現にかなり近く、GHQ草案に比べてより根本的な規定といえる(注4、注5)。
なお、wiki「日本国憲法第25条」では、憲法草案要綱ではなく”旧日本社会党議員であった鈴木義男らが、ドイツのワイマール憲法第151条第1項を参考に起案した”となっているが、上記条文を見る限り、憲法草案要綱の条文に近いと言っていいと思う。
いずれにせよ、日本側の発案である事には違いない。

二院制や議院内閣制も日本側の主張が取り入れられたものであり、GHQ草案がそのまま日本国憲法になったわけではない。
また「憲法研究会」の憲法草案要綱自体が、GHQ草案に大きな影響を与えた事は以前の記事↓に書いた通り。
その点でも、憲法は単純な「押し付け」とはいえないと思う。


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・注1
岸時代の憲法調査会の肉声テープ発見 (約17分間) 20160225houdoustation

憲法9条は幣原喜重郎首相のマッカーサーへの提案であった (約5分間)

報道ステーション 2_2 2016年2月25日 (約37分間)

・注2
ほかにも。

日本国憲法の草案はメイドインジャパン 2007年2月放送
現行の日本国憲法はアメリカの押し付けだ、という定説は改憲派の論拠のひとつになって­いる。たしかに、GHQ草案をベースに現在の日本国憲法の原案(大日本帝国憲法の改正­案)が日本政府によって作られたことは歴史的事実ではあるが、番組はそのGHQ草案の­1ヶ月以上前にすでに日本の民間人による独自の憲法草案が存在し、その草案が逆にGH­Q草案にも影響を与えた可能性を指摘した。

「日本国憲法を生んだ密室の九日間」(1993.2.5 放送)

20140802 講師:鈴木昭典さん「日本国憲法はどのようにして生まれたのか~制定当時を知るジャーナリストが語る」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

憲法制定過程に関するものではないが、憲法を知る上で。
この類いのものは、山のようにあるので、その中からふたつ。

小林節 慶応大学名誉教授、長谷部恭男 早稲田大学法学学術院教授 「憲法と安保法制」① 2015.6.15
集団的自衛権の行使容認を含む安全保障関連法案について、憲法学者の小林節、長谷部恭­男両教授が話し、記者の質問に答えた。
司会 星浩 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)

憲法を踏みにじって憲法の上に存在する「日米地位協定」について。
「日米地位協定」 沖縄と本土のどうしようもない“溝”/報道ステーション
http://www.at-douga.com/?p=14117

・注3
「平野文書」の全文はこちらのサイトにもあります。
http://kenpou2010.web.fc2.com/15-1.hiranobunnsyo.html

「平野文書」とは

幣原喜重郎元首相が語った 日本国憲法 – 戦争放棄条項等の生まれた事情について 「幣原先生から聴取した戦争放棄条項等の生まれた事情について」より
 1946年(昭和21年)に公布された「 日本国憲法にほんこくけんぽう」の誕生に関わり、とりわけ「戦争の放棄」を謳った第九条の成立に大きな役割を果たしたとされる 幣原喜重郎しではらきじゅうろう [1]元首相が、亡くなる直前に戦争放棄条項などが生まれた事情などについて語っている。
 聞き手は衆議院議員であり、幣原の秘書官であった平野三郎[2]で、聞き取りは、幣原が亡くなる10日ほど前の1951年(昭和26年)[3]2月下旬に行われたとされる。
 幣原は、『口外無用』として平野に語ったとされるが、平野は、「昨今の憲法制定の経緯に関する論議の状況にかんがみてあえて公にすることにした」とし、『幣原先生から聴取した戦争放棄条項等の生まれた事情について』と題されたその文書は、1964年(昭和39年)2月に憲法調査会[4]事務局によって印刷に付され調査会の参考資料として正式に採択された。
 これが、いわゆる「平野文書」で、現在は国立国会図書館憲政資料室に保管されている。

・注4
http://cojmow.jimdo.com/日本国憲法全般についても-その生みの親は日本人/
“GHQ草案には生存権は書かれていなかった。日本人の議会メンバーがGHQ草案について討議し、いくつかの条文に修正を加え、新たな条文(25条)を加え生存権を復活させるなどして、現在の日本国憲法ができた。”
http://cojmow.jimdo.com/登録申請予定の資料群及び参考文献のリストとそれらの内容紹介/

・注5
憲法草案要綱の条文についてはこちら
http://kanzengoken.com/?page_id=861

・補足 こちらも
日本国憲法誕生の真実
http://www.magazine9.jp/interv/koseki/koseki.php

国立国会図書館 日本国憲法の誕生
http://www.ndl.go.jp/constitution/index.html

[ 2/27 追記 ]
報道ステーションの特集に内容を全文書き起こしてfacebookで公開されている方がいらっしゃいます。


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「押しつけ憲法論」のでたらめ – 自民党改憲漫画パンフがひどすぎる

いよいよ自民党が長年の念願である憲法改正を争点化すると公然と宣言した。
昨年末には「歴史を学び未来を考える本部」(本部長=谷垣禎一幹事長)を発足させ、連合国軍総司令部(GHQ)占領下の憲法制定過程や旧日本軍による「南京事件」、慰安婦問題などを議論する予定だという。
“憲法制定過程の議論は、将来の憲法改正に向けた布石との見方がある。”
要するに、憲法改正に向け、彼らなりの「理論武装」をしようというわけだ。

首相年頭会見 参院選で改憲を争点化 「自公で過半数目指す」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201601/CK2016010402000191.html

南京事件や慰安婦問題議論へ…自民「歴史本部」
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20151223-OYT1T50031.html

自民が歴史検証組織 東京裁判など「修正主義」指摘も
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201511/CK2015112102000125.html

また、それに先だって昨年春には自民党憲法改正推進本部が、憲法改正のポイントを解説した漫画政策パンフレット「ほのぼの一家の憲法改正ってなぁに?」を発行した。

自民、漫画で改憲PR 「日本にGHQが与えた憲法」
http://www.asahi.com/articles/ASH724Q7FH72UTIL01S.html

・この漫画は無料でダウンロードできます。歴史修正主義的(^_-)憲法改正漫画はこちら

自民党改憲パンフ

この漫画、素人から見ても突っ込みどころ満載なのだが、突っ込みどころが多すぎるのでとりあえず「憲法制定過程」に関する部分について素人でもおかしいと思う部分について考えてみたいと思う。

具体的な話に入る前に、憲法制定のおおよその流れをおさらいしておきたい。
年表は(注1)をご覧いただきたい。

敗戦に伴い、日本はポツダム宣言を受け入れ、新憲法を制定(大日本帝国憲法の改正)を行うことになりました。
しかし、当初の政府案は、天皇主権、天皇の統帥権などをそのまま残したもので、ポツダム宣言の「主権在民」などの原則に反するものでした。
この案の一つが2月1日、毎日新聞によってスクープ(リーク)されます。

それを見たマッカーサーは、日本側に任しておけないと判断し、憲法改正案のGHQ草案を作成させます(2/3)。
ここから9日間で、秘密裏に、憲法草案が作成されます。
2月13日GHQは、日本側の「憲法改正要綱」の受取りを正式に拒否するとともに、GHQ草案を吉田外相、松本らに手交。
2/22 閣議、GHQ草案受入れ決定。GHQ草案に基づく日本案の起草を開始。
3/2 日本案(「3月2日案」)完成。
3/4 政府、「3月2日案」をGHQに提出。
3/5 閣議、GHQとの交渉により修正された草案の採択決定(確定草案「3月5日案」成立)。
ここから、約8ヶ月かけて議会での討議と修正作業が始まります。
10/29枢密院本会議、天皇臨席の下で「修正帝国憲法改正案」を全会一致で可決。天皇、憲法改正を裁可。
11/3 日本国憲法公布。
というのがおおよその流れです。

「自民党改憲マンガパンフ」のでたらめ

さて、話を自民党の改憲マンガパンフに戻します。
この漫画の14ページから20ページで、憲法制定過程について書かれているが、
いかにも大急ぎでGHQが作った憲法案をただ日本語訳にしたのが現憲法であるかのようなイメージを植え付けようとしていますが、事実に反する内容です。

例えば、漫画の中に、憲法案を作成したGHQメンバーの「ハーグ条約には『占領者は占領地の現行法律を尊重すべし』とあるが…」「憲法を我々の手で変えてしまうのですか?」という台詞(ナレーション?)があるが、彼らはそのような認識で憲法案を作ったのか。
自民党に電話して確かめてみた人がいます、えらい !!。
(今回このサイトを参考にさせていただきました、ありがとうございます)

自民党の答えは、「史実を踏まえ、再構成したものである」「憲法改正がハーグ条約に違反しているという認識があったという意味ではない」という回答だったそうです(注2)。
そうなると「日本人のための憲法ではなく、我々のために日本国憲法を作ろうっていうのか…」という台詞もまた、メンバーにそういう認識があったかどうかは事実ではない、ということのようです。
ここ、大事なところなんですが。
このように勝手な想像(妄想? あるいは意図的ねつ造 ?)で話を進められると、なぜ憲法を改正しないといけないのか、という大前提が崩れてしまいます。
「うちのルールを隣の人に口出しされているみたいなもんじゃない !!」という台詞があることを見ても、隣の人(GHQ)が作った憲法だから改正すべきという論理展開になっています。
他にもこうした類いの「想像」がたくさんあって、これでは「史実を踏まえ、再構成したものである」というより、「史実を無視して、都合良く再構成したものである」というレベルです(注3)。

そもそもたった8日間で憲法はできたのか。
GHQ案をただ日本語訳にしたのが現憲法なのか。

自民党の改憲マンガパンフは、意図的な誤読を誘うような構成になっています。
慌てん坊の読者は「たった8日間で憲法はできた。GHQ案をただ日本語訳にしたのが現憲法」と誤解してしまいそうです。

もちろんそうではありません。
8日間(9日間)というのは、GHQが草案を作成(執筆)するのにかかった日にちにすぎません。

(注1)の表を見ていただければわかるように、民政局法規課長のラウエルが「日本の憲法についての準備的研究と提案のレポート」を作成したのが12月6日 。
また、日本側の民間団体、憲法研究会が「憲法草案要綱」を発表するとGHQはすぐにそれを翻訳して研究しています(12/31)。
1月11日にはラウエルが憲法研究会案に対する所見「私的グループによる憲法改正草案(憲法研究会案)に対する所見」 を提出しています。
1月24日には幣原喜重郎首相とマッカーサーが会い、憲法9条の骨格や象徴天皇制についての合意があったと言われています。
(幣原マッカーサー会談については、重要なのでまた次回にでも書こうと思います。)
それに基づいてマッカーサーは2月3日「三原則(マッカーサー・ノート)」を提示して草案の作成を指示しました。

こうした事前の準備があり、また日本側の民間団体、憲法研究会の憲法草案要綱をベースにしたからこそ、執筆作業は短時間でできたと言えます(注5)。

作成したGHQ草案を日本側に手渡したのは2月13日。
GHQ案の翻訳、修正、GHQとの交渉をへて日本政府の確定草案が3月5日に成立。
ここから、約8ヶ月かけて議会での討議と修正を経て「改正案」が可決され天皇が憲法改正を裁可したのが10月29日。11月3日公布。

ラウエルが「日本の憲法についての準備的研究と提案のレポート」を作成してから「改正案」が可決されるまで約11ヶ月。
具体的な草案作成を始めてからでも約9ヶ月。
その間に様々な討議・修正が行われています。
二院制や、25条「生存権」のような「憲法研究会」の案にあった内容を盛り込むなど重要な修正がいくつも行われています。
9条の文面も何度も検討し修正されています( 憲法9条の成立過程について)。

当然、GHQ案をただ直訳(翻訳)しただけではありません。
この点でも、改憲パンフは「憲法って変な日本語が多くない ?」「アメリカ合衆国憲法やリンカーンの演説なんかが翻訳口調で使われているからなぁ」と、またしても「直訳(翻訳)憲法」という誤解をしかねない印象操作をしています(注4)。
憲法草案は、アメリカ合衆国憲法やリンカーンの演説だけでなく、国連憲章、人権宣言、ワイマール憲法やソビエト憲法、日本側の憲法研究会「憲法草案要綱」なども参考にしています。これもあえてアメリカ以外を省略することによって「アメリカに押し付けられた」感を強調する印象操作でしょうか。

このように、「ねつ造」の一歩手前というべき内容が一個人のブログで展開されるならまだしも、政権党の「政策パンフレット」として発行されるとは、もはや驚くほかない。
本題からは外れるが「ケータイもネットもなかった時代の憲法で今の社会について来れるかしら?」などという台詞は、「政策パンフ」と呼べる代物ではない。

日本国憲法は押し付けられたものか、押しつけ憲法論はどこへ行くのか

日本の支配者が、およそまともな改正案を作れなかったことに対して、GHQ(と憲法研究会(注5)などの日本国民の声)が「押し付けた」ということもできると思います。
もともと憲法は権力者に対して、好き勝手しないよう押し付けるもの、ということもできます。

一方で、原案はGHQが作ったものとはいえ、時間をかけて様々な修正が行われていること、
選挙で選ばれた国民の代表である国会で、議論・修正・可決されていること、
その根底には、日本側の改革案(憲法研究会など)があること、
そして公布後国民に受け入れられ、70年間守られてきたことなどを考えると「押しつけ憲法」とは言えないと思います。

「押しつけ憲法」かどうかは、どちらとも言えるわけで、あまり意味のある議論とは思えません。
むしろ、「押しつけ憲法」だと主張する人たちの考え方の根底に何があるかが重要だと思います。

彼らの主張は、敗戦時アメリカによって「押し付けられた」価値観を受け入れられないということ。
改憲マンガでは、松本大臣が怒って帰ってしまうというシーンがありますが、これは単に、松本大臣が「主権在民、基本的人権」などの現憲法の精神を受け入れられなかったということにすぎない。
現代の「押し付け」論者(押しつけだから改正すべきという意見の持ち主)も、この現憲法の原則を変えるべしと言っているにすぎない。

「慰安婦問題での妥協は米日韓の一体的有事体制のため」という記事にも書いたが、安倍自民や日本会議が進める歴史修正主義・戦前回帰は、しょせんアメリカが黙認できる範囲でしか進める事ができない。
この時代にあって、「主権在民、基本的人権」を後退させることなど、アメリカのみならず全世界から受け入れないであろう。
対米従属を基本原則とする自民党が、一方でアメリカから「押し付けられた」憲法の基本原則を破棄しようとするのは矛盾である。
これが「戦後レジュームからの脱却」の根本的な矛盾に思える。

「敗戦した日本にGHQが与えた憲法のままでは、いつまで経っても日本は敗戦国なんじゃ」という趣旨の発言が改憲マンガの中にあるが、敗戦からの脱却・戦後レジュームからの脱却を目指すなら、むしろ対米従属という現状こそ、改革すべきではないのか。
沖縄にも、首都圏にも、戦勝国の軍隊が駐留し、首都の空は外国軍が管制権を握ったまま。同じ敗戦国であるドイツやイタリアと比べても、ずば抜けて不平等な「地位協定」。
憲法問題より、こうした従属姿勢を改めることこそ、敗戦国・戦後レジュームからの脱却ではないのか。

・今回は、憲法制定過程にのみ焦点を当てて考えてみた。次回は、なぜ憲法制定を急いだのか、憲法9条は誰が何のために発案したのか、について考えてみたい。
 それ以外の改憲マンガの問題点、自民党改正案の問題点については、記事を書く時間がとれそうにもない。
 それらの点については(注6)にあげたサイトなどを参考にしていただければと思います。


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・(注1)
1945年
12/6 民政局のラウエル、「日本の憲法についての準備的研究と提案のレポート」を作成。

12/26憲法研究会「憲法草案要綱」を発表

12/31連合軍通訳翻訳部(ATIS)、憲法研究会案を翻訳。

1946年
1/11 ラウエル、憲法研究会案に対する所見を幕僚長に提出(注5)。

1/24 幣原喜重郎首相、マッカーサーと会談(天皇制存続と戦争放棄に関して話合い)。

1/25 マッカーサー、天皇の戦犯除外に関し、アイゼンハワー陸軍参謀総長宛書簡。

2/1 毎日新聞、「憲法問題調査委員会試案」のスクープ記事掲載。

2/2 ホイットニー、マッカーサーにメモ「憲法改正(松本案)について」を提出。

2/3 マッカーサー、3原則を提示し、民政局に憲法改正案(GHQ草案)の作成指示。

2/4 民政局、GHQ草案起草作業開始。

2/8 政府、「憲法改正要綱」と「説明書」をGHQに提出。

2/10 GHQ原案脱稿、マッカーサーに提出(2月12日まで調整作業継続)。

2/13 ホイットニーら、「憲法改正要綱」の受取りを正式に拒否するとともに、GHQ草案を吉田外相、松本らに手交。

2/22 閣議、GHQ草案受入れ決定。

2/26 閣議、GHQ草案に基づく日本案の起草を決定、開始。

2/26 極東委員会、ワシントンで第1回会議(11か国で構成。ソ・豪・英、天皇制廃止を主張)。

3/2 日本案(「3月2日案」)完成。

3/4 政府、「3月2日案」をGHQに提出。佐藤(達)法制局第1部長とケーディスらが翌日まで交渉しこれに修正を加える。

3/5 閣議、GHQとの交渉により修正された草案の採択決定(日本政府の確定草案「3月5日案」成立)。

3/6 政府、「憲法改正草案要綱」発表。

4/17 政府、「憲法改正草案」発表。

8/24 衆議院本会議、委員会修正案のとおり「帝国憲法改正案」を修正可決、貴族院に送付。

10/6 貴族院本会議、委員会修正案のとおり「帝国憲法改正案」を修正可決し、衆議院に回付。

10/7 衆議院、貴族院回付案を可決。

10/29枢密院本会議、天皇臨席の下で「修正帝国憲法改正案」を全会一致で可決(美濃部など2名欠席)。天皇、憲法改正を裁可。

11/3 日本国憲法公布。貴族院議場で「日本国憲法公布記念式典」挙行。「日本国憲法公布記念祝賀都民大会」開催。

http://www.ndl.go.jp/constitution/etc/history03.html
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kenpou.nsf/html/kenpou/nenpyo.pdf/$File/nenpyo.pdf
ほかより作成

・(注2)
占領下での日本国憲法の作成(大日本帝国憲法の改正)がハーグ条約に違反しているという意見への反論。
「日本国憲法=押しつけ憲法」論は理論に値するのか?(8):ハーグ陸戦条約の適用はありません」
http://blog.livedoor.jp/nihonkokukenpou/archives/51802524.html

・(注3)
その他の例をいくつか上げてみる。

改憲マンガには、”できるわけがない、、、憲法を作るなんて、、、我々は専門家じゃないし”という台詞がある。
事実は、”アメリカ軍の将校が中心になり、民間人も加わりましたが、将校の多くは、もともと弁護士や政府の役人、政治学者、ジャーナリストなどの仕事を経験していました。優秀なスタッフがそろっていたのです。ケーディス大佐自身も、弁護士でした。” (池上彰「池上彰の憲法入門」ちくまプリマー新書より)
余談だが、この池上氏の本は、決して護憲派、リベラル派の立場で書かれた本ではないが、自民党改憲マンガパンフと一緒に読むと、いかに改憲マンガがデタラメかがよくわかる。

改憲マンガでは、「できるわけがない、我々は専門家じゃないし」という台詞のあるページで、スタッフが下を向いて、いかにも「上司に無理な命令をされて困っている」というイメージで描かれている。
しかしスタッフだった1人は後にこう述べている。
”Qどんな気持ちで引き受けましたか。 A憲法草案を書くなんて思っていなかったから、最初はびっくりしましたが、女性の権利を書くことになり、すごく喜びました”
「日本国憲法の「男女平等」を起草した ベアテ・シロタ・ゴードンさん Q憲法にどんな思いを込めましたか?」より
http://www.tokyo-np.co.jp/hold/2008/sokkyo/news/200705/CK2007050102019250.html

“ その一週間というのは、そうね……。「民主主義」の根を他の国に、少し前までは敵だった国に対して、全然敵とは思わないで、本当に心からこうみんなが一生懸命に作成しました。私だけじゃないですよ。みんなそうだったんです。20人くらい。”
「日本国憲法第9条にかける私の想い ベアテ・シロタ・ゴードンさんロングインタビュー」より
http://www.shinyawatanabe.net/atomicsunshine/BeateSirotaGordon/interview

改憲マンガでは、「8日間」ということになっているが、池上本では「9日間」。
池上氏に限らず「日本国憲法を生んだ密室の九日間」という題名のドキュメンタリーや本もある。
一日くらいどうということはないが、こんな細かなところでも「いかに急いで作ったか」という印象付けをしたい自民党、みみっちいぞ。

改憲マンガではないが、安倍晋三公式サイトには、
“ホイットニーは部下に「2月12日までに憲法草案を作るよう」に命令し、「なぜ12日までか」と尋ねた部下にホイットニーは「2月12日はリンカーンの誕生日だから」と答えています。これも、その後の関係者の証言などで明らかになっています。
草案作りには憲法学者も入っておらず、国際法に通じた専門家も加わっていない中で、タイムリミットが設定されました。日本の憲法策定とリンカーンの誕生日は何ら関係ないにもかかわらず、2月13日にGHQから日本側に急ごしらえの草案が提示され、そして、それが日本国憲法草案となったのです”と書かれています。
またまた素人が作ったという主張のようですが、それはともかく、2月12日までに作る理由は、その日、日本側とGHQの会談が予定されていたからです。その会談でGHQは、草案を日本側に提示する予定でした。(実際には一日ずれて13日に会談が行われた)
これもまた、日本には関係のないアメリカの都合で憲法草案が作られたという印象操作です。
さらに言えばGHQ草案がそのまま「日本国憲法草案」になったわけではありません。半月以上の時間をかけて「二院制」などの修正が(日本側草案になるまでの間でさえ)行われています。
なお、GHQが、日本側草案が確定する3月上旬ころまでは、急いでいたのは事実です。日本が生まれ変わったこと(象徴天皇制や戦争放棄など)を世界にアピールし、極東委員会での「天皇制廃止、天皇戦犯追及」から逃れるためです。GHQは、占領を効率よく行うためには天皇制が必要と考えていました。その点については次回詳しく書く予定です。

改憲マンガには、13日の会談でGHQ案を見せられた日本側が ”こ、こんな、、、英語で書かれた憲法を ただ日本語に訳せというのか、、、”と言う台詞があります。
もちろん、アメリカ側は、GHQが作った案をそのまま直訳して「日本国憲法」にせよ、と要求したわけではありません。
日本側がその案をもとに検討するにしても「訳す」という実務的作業が必要となります。
ただそれだけのことなのに、大きなスペースを割いて「ただ日本語に訳せというのか」という台詞が入ると、まるで「そのまま直訳して日本国憲法にせよ」とGHQが要求していたかのように「誤読」する可能性もあります。
これはあえて「誤読」されるように作られた悪質な構成と言わなければなりません。
このあと、GHQ側が「我々はちょっと庭を散歩してきます。その間にじっくりと検討してください」という台詞がありますが、この日の会談では、GHQ案を持ち帰るかどうかの返事をすればいいだけですが、これも読みようによっては、この案をそのまま日本国憲法にするかどうかの返事を迫られたかのように勘違いしてしまいそうです。実際に日本政府が草案をたたき台として受け入れ決定するのは2月22日、草案を手渡されてから9日後です。そして、ここから修正作業と議論が始まります。
この日、2月13日の会談での出来事は、日本側の旧態依然とした案が拒否されたこと、GHQが秘密裏に草案を作っていたこと、GHQ案が日本側の想像を超えるほど「進歩的」だったことがポイントで、むしろ日本側の感覚が古すぎることを恥じ入るべきであって、その場で何か即断即決を求められたわけではないので、わざわざ2ページも費やす必要などないのです。

またまた、みみっちいことで恐縮ですが、3月4日に日本案をGHQに提出しそのまま徹夜で詰めの交渉が行われますが、改憲マンガでは「3月6日には憲法改正草案要綱ができあがってしまったのだ」となっており、これでは2晩徹夜したことになります。実際には3月5日には、交渉を終え閣議決定をしています。6日は、それが発表された日です。
これは単なる誤植、あるいはマンガ作成者の勘違いなのか、それとも2晩もの徹夜作業で押し付けられたという誤読を誘う印象操作なのか(^_^;)。

さらに、日本側の改正案が毎日新聞によってスクープされた2月1日から、GHQ案を日本側に手渡した2月13日までは、実に9ページを使って説明しているのに、2月13日以降11月3日の日本国憲法公布までは、たったの1ページ。しかも「二院制などいくつかの変更要望をどうにかねじ込み」という説明があります。修正はこれだけ ??
これでは、およそ8ヶ月をかけて、日本の国会で、日本の議員によって様々な修正が行われたことをあえて軽く見る「印象操作」に他なりません。
実際には「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」のような、日本の民間団体「憲法研究会」の案にあった内容を盛り込むなど重要な修正がいくつも行われています。

・(注4)
憲法の「翻訳口調」に関する考察はこちらの記事の後半をご覧ください。
http://netouyobuster.blog.jp/archives/1031616478.html

また池上本によれば、「平仮名を使った口語体で書いてほしい」という声に応えて「路傍の石」の作者、山本有三に協力をあおいだそうです。
このように、憲法案は、内容はもちろん表記に関しても様々な修正がされています。

・(注5)
憲法研究会の憲法草案要綱自体が、明治15年に草案された植木枝盛の「東洋大日本国国憲按」や土佐立志社の「日本憲法見込案」など、日本の民主主義思想を受け継いだものということができる。また、この憲法草案要綱がGHQにに与えた影響は大きい。

元東京大学経済学部教授であった社会統計学者・高野岩三郎が、敗戦直後の1945年10月29日、日本文化人連盟の設立準備会の際、戦前から左派の立場で憲法史研究を続けていた鈴木安蔵(京都学連事件で検挙・憲法学者)に提起し[1]、さらに馬場恒吾(ジャーナリスト)・杉森孝次郎(早稲田大学教授)・森戸辰男(元東京帝国大学経済学部助教授)・岩淵辰雄(評論家で貴族院議員)・室伏高信(評論家)らが主なメンバーとして参加し発足した。1945年12月26日に「憲法草案要綱」を発表し、これにGHQが注目していわゆる「GHQ憲法草案」が作成されたため、GHQ案を原型とする現行の日本国憲法の内容に間接的に多くの影響を及ぼしたと小西豊治は主張している(内容・影響の詳細については当該項目を参照)。
https://ja.wikipedia.org/wiki/憲法研究会

作成の中心となった鈴木安蔵は、発表後の12月29日、毎日新聞記者の質問に対し、起草の際の参考資料に関して次のように述べている。
明治15年に草案された植木枝盛の「東洋大日本国国憲按」や土佐立志社の「日本憲法見込案」など、日本最初の民主主義的結社自由党の母体たる人々の書いたものを初めとして、私擬憲法時代といわれる明治初期、真に大弾圧に抗して情熱を傾けて書かれた廿余の草案を参考にした。また外国資料としては1791年のフランス憲法、アメリカ合衆国憲法、ソ連憲法、ワイマール憲法、プロイセン憲法である。
この案が新聞に発表された5日後の12月31日には連合国軍総司令部(GHQ)参謀2部(G2)所属の翻訳通訳部の手で早くも英訳され、詳細な検討を実施したGHQのラウエル法規課長は、翌年1月11日付で、「この憲法草案に盛られている諸条項は、民主主義的で、賛成できるものである」と評価し(1959年にこの文書がみつかった)、翌1946年1月11日に同案をたたき台とし、さらに要綱に欠けていた憲法の最高法規性、違憲法令(立法)審査権、最高裁裁判官の選任方法、刑事裁判における人権保障(人身の自由規定)、地方公務員の選挙規定等10項目の原則を追加して、「幕僚長に対する覚書(案件)私的グループによる憲法草案に対する所見」を提出、これにコートニー・ホイットニー民政局長が署名しいわゆる「ラウエル文書」が作成された。(以前からGHQ草案を基にした憲法が制定後、憲法研究会の「要綱」と似ていることが早くから指摘されていたが、ラウエルが「要綱は民主主義的で賛成できる」と評価した文書の発見で、要綱が大きな影響を与えたことが確認された)。
https://ja.wikipedia.org/wiki/憲法草案要綱

(ラウエルの「所見」報告書)
この憲法草案中に盛られている諸条項は、民主主義的で、賛成できるものである。
(ラウエルの回想)
私個人は、その民間の草案に感心しました。・・・大きな一歩の前進となったと思いました。民間草案要綱を土台として、いくつかの点を修正し、連合国最高司令官が満足するような文書を作成する事ができるというのが、当時の私の意見でした。
(影響を受けましたかという質問に)
意識的であろうと潜在的であろうと私は間違いなくその影響を受けています。
行政に関心のある者はみな、おそらくそれを目にしていたはずです。
「平和憲法の深層」古関昇一 ちくま新書 より

なお、憲法研究会の憲法草案要綱と現憲法との関わりについてはこちらのサイトが参考になります。
http://www.ndl.go.jp/constitution/shiryo/02/052shoshi.html
http://alter-magazine.jp/index.php?―憲法研究会の「憲法草案要綱」をめぐって―
http://mainichi.jp/articles/20150503/org/00m/040/006000c
http://tamutamu2011.kuronowish.com/kennpoukennkyuukai.htm
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kenpou.nsf/html/kenpou/chosa/shukenshi001.pdf/$File/shukenshi001.pdf
http://kenbunden.net/constitution/files/shiryou_ver002/19_071129_a.pdf
http://www.ncoj21.net/憲法研究会「憲法草案要綱」現代語訳
http://kenpouq.exblog.jp/20401381/
http://www.ndl.go.jp/constitution/shiryo/03/046shoshi.html
http://www.ndl.go.jp/constitution/shiryo/03/060shoshi.html
http://blogs.yahoo.co.jp/pen_tsuyoshi/32167072.html
http://d.hatena.ne.jp/koumichristchurch/20140511/p1

・(注6)この原稿を書くにあたりいくつかのサイトを参考にさせていただきました。感謝します。(リンク先の主張すべてに賛成というわけではありません)
愛国カルト化する自民党:卑怯な憲法改正推進マンガの嘘1
http://netouyobuster.blog.jp/archives/1031486784.html
愛国カルト化する自民党:卑怯な憲法改正推進マンガの嘘5
http://netouyobuster.blog.jp/archives/1032527775.html
自民党の改憲漫画から「押しつけ憲法論」を考える
http://bylines.news.yahoo.co.jp/watanabeteruhito/20150503-00045366/
自民党改憲マンガに反駁するために~渡辺輝人弁護士、上脇博之教授、“あすわか”の論考を推奨します
http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/43966846.html
安倍首相の指示で作られた「改憲推進マンガ」がデタラメだらけであることが判明
http://buzzap.jp/news/20150503-kenpoukaisei-manga/
憲法改正を解説するという自民党の漫画が解説漫画としてありえない
http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20150429/1430385679
自民党改憲漫画の何が残念なのか 改憲派ライターが読み解く
http://www.news-postseven.com/archives/20150506_321091.html
改憲に動き始めた安倍首相の「押しつけ憲法論」は嘘だらけ! GHQ支配の元凶は自民党とお前のじいさんだ!
http://lite-ra.com/2016/01/post-1858.html


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